ちばにう通信

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マニュアルで伝えられないもの

投稿日:2009年11月14日 更新日:

最近、料理の世界もマニュアル全盛の感があります。全国展開のファミリーレストランなど、本部で作ったマニュアルに従って、簡単に手を加えるだけで料理が客席に運ばれるスタイルがごく普通に行われており、客席に料理を運ぶフロアでも、若いアルバイトのような人が、接客マニュアルで指示されたとおりの動きをしている、といった具合です。

たしかに、全国に同じ味とサービスの店を計画的に出店していくためには、完璧なマニュアルがあれば、料理をつくる人も、フロアサービス係も、それほど勉強や経験を積まなくても、何とか仕事をこなしていける、そのようなシステムにしなければとてもやっていけないでしょう。

しかし、「如何にしてお客様に美味しく食べていただくか」という思いで、毎日市場を駆け回り、仕入れてきた食材を厨房で仕込んでいる身からみると、こうした仕事をマニュアルでシステム化するなんていうことは、とても考えられません。もし、懐石料理の厨房の中をマニュアル化しようとしたら、ものすごく膨大な資料の山となり、読むのが大変で、たぶんマニュアルの用を足さなくなってしまうでしょう。

たとえば、ある食材を「5分茹でる」とマニュアルに書いてある場合、システム化された厨房では5分茹でたらそのまま皿に盛りつけて食卓に並べるでしょう。懐石料理では、5分茹でた後、食べやすい味や硬さになっているか味見し、少し硬いようなら、もう一度手を加えます。

また、プロの料理人が包丁を入れた刺身と、素人が切った刺身と、切断面を顕微鏡で見ると、素人の包丁が入った刺身の方は細胞がつぶれてグチャグチャになっているのに対して、プロの料理人の方は細胞の配列もきれいに揃っていることが確認できます。

こうしたことは、長年の修業を積んで初めて身につくもので、マニュアルで即製できるものではないと思います。

今は、何でもマニュアルで片がつくような風潮ですが、よく注意してみると「マニュアルの落とし穴」があちこちで出てきているのではないでしょうか。いろいろな仕事場で、昔なら考えられなかったような事故が起きているのを時々耳にします。

マニュアルも人間が作ったものであり、100%完璧なものではなく、ずっと使われているうちに「劣化」も起こるでしょう。どんな世界でも「基本」というものがあり、それを身につけるのを怠って、マニュアルだけでやろうとすると、どこかに大きな落とし穴が口を開けて待っているという警告ではないでしょうか。

(写真・食膳に添えられる、季節感あふれる「食べる彫刻」)

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