ちばにう通信

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厳しさに耐えてこそ

投稿日:2010年11月1日 更新日:

(編集長より)「花季」店主・佐藤豊さんのエッセイ、今回は少し趣向を変え、小紙との対談形式で話を進めることにします。毎回、佐藤店主の原稿を編集しながら、和食と毎日それを作っている料理人たちの懐の深さ、彼らが厳しい修業で身につけてきたものの中身の濃さといったことを感じてきましたが、インタビュー形式で、さらにプロの料理人のこだわり、本音に迫っていければと思います。

本紙 いつも小紙に素晴らしいエッセイを書いていただき、ありがとうございます。エッセイには、和食の舞台裏が描かれ、「厨房からみた世界」がじんわりと伝わってくる気がします。特に、これまでの話の中で、修業時代の話が印象的だったので、その辺からお聞きしていきたいと思います。

佐藤 料理人の仕事というのは「3K」です。特に、修業時代は長時間できつい仕事、親方や先輩の言うことが絶対という世界です。一緒に弟子入りした仲間も1年もすると半分はやめてしまい、その後もどんどん減っていき、30代まで料理人として残る者は少ないのが現状です。

本紙 30代、ですか。その場合、残る人と辞めていってしまう人とを分けるものは何だと思いますか。

佐藤 やはり、今が楽しくないとすぐ辞めてしまうという傾向があって、最近それがますます強まっている気がします。しかし、それでは修業にはならない。今が良くなくても、我慢して技術や知識を身につけることで、将来が開けてくるというのは、どの世界でも同じではないでしょうか。

本紙 日本人が弱くなっている、あるいはワガママになっているという指摘はよく耳にします。子供の頃から「個性尊重」とかで、我慢することを教えないから、成人してからもちょっとした逆境に見舞われると、耐えられないという話も聞きます。

佐藤 社会全体が弱い人間しか育てられなくなっているような気がします。相撲やオリンピックなどのスポーツの世界でも、日本の選手は技術的には優れているかもしれませんが、何となくひ弱というかハングリー精神に欠けているのでしょう。

子供の頃から我慢することを覚えさせられていないから、社会に出てもちょっとしたことにも我慢ができない。それでも我慢して仕事をやっているとウツになってしまう。最近特に多いのは、仕事をしている時だけウツになるというのだそうです。

本紙 先ほどの話では、料理人を志願してくる若い人たちにもそうした傾向がみられるとのことですが。

佐藤 面接の時に、自分は根性があるとアピールする若者に聞くと、学校のクラブ活動を熱心にやったからというような話です。でも、クラブ活動のように自分が好きなことを一生懸命やったというのと、仕事に就いて苦労する、一人前の料理人として必要な技術や心構えを身につけるというのとは全然違うのです。

好きも嫌いもない、耐えながらでしか身につかないものってあると思います。

本紙 修業というのは、要するに何を学ぶのでしょうか。お話を伺っているのと、何やらマニュアルのようなものがあるわけでもなさそうだし、技術、知識といっても、具体的にどんなものなのか、いまひとつイメージがつかめません。

佐藤 マニュアルのようなものはありません。技術や知識といっても、言葉で現せるものはホンの一部で、あとは毎日々々親方や先輩のすることを傍らで見たり、親方のする仕事のホンの一部を手伝ったりすることで、文字通り体で覚えていくわけです。

本紙 その辺をもう少し詳しくお聞きしたいと思いますが、以下次号で。

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