ちばにう通信

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味をきわめる

投稿日:2010年1月9日 更新日:

あけましておめでとうございます。

今年も、厨房の中で自分の「味」を究め、確立していき、お客様に満足していただくための努力を続けていきたいと思います。
最近、和食の世界でも、中華や洋食の要素を取り入れ、新しいレシピを作り出す動きが出てきています。私も、時としてジャンルを超えた食材や料理法を取り入れることがあります。

これは、いわゆる「創作料理」と呼ばれるものとは違い、あくまでも和食の閾を守りながら、新しい食材やそれに合った調理法を追求する試みです。和食の原点や精神はしっかり守りながらも、新しい食材の特徴、それを使った料理法については、常に勉強、挑戦を続けなくてはならないと考えています。

「味」というのは、非常にデリケートなものであると同時に、個性的な性格のものだと思います。

ある厨房で、直径60センチを越える大鍋で吸い物を作っています。いつものように、仕上げとして親方に味を見てもらうと、親方から酒を2,3滴加えるように指示されます。言われた弟子は、「あんな大きな鍋一杯の吸い物に酒を2,3滴垂らしても分かるわけがない」と考え、親方の指示を無視して、もう一度そのままの状態で親方に差し出します。

すると、親方はもう一度同じ指示を出します。弟子も意地になって、もう一度何もしないままの吸い物を親方に持っていきます。

と、親方はさらに「酒を2,3滴」と指示し、ついに弟子も半信半疑ながら、親方の指示どおりに酒を垂らしてから、再三度親方に持っていくと、ようやく親方から「これで良し」とOKが出たと、これはある料理場で実際にあった話です。

私自身の経験ですが、料理を食べ終わったお客様から声がかかり、「あなたは○○ホテルで働いていたでしょう」と言われました。たしかに、それは以前私が務めていたホテルの名前です。

このお客様は、そのホテルの料理の味がお好きということで、私の料理にも共通した「味」を発見して、それを褒めてくださったのでした。私も、このホテルの料理長の味を理想の味として追求してきていたので、そのことをお客様に分かっていただけたことで、大変嬉しく感じました。

「味」というのは、どこまでも研ぎ澄まされるようにデリケートなものであると同時に、非常に個性的なものです。万人に歓迎される味というようなものはなく、やはり一人の料理人が創り出す「味」(個性)に、共鳴してくださるお客様がいらっしゃることが、私たち料理人の何よりもの支えとなります。

今年も宜しくお願い申し上げます。

(写真・花季玄関の1月のデコレーション)

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