ちばにう通信

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種の力

投稿日:2005年10月15日 更新日:

辺りに漂う木犀の香りが、例年の如く秋の記憶をにわかに呼び戻してくれる。けれど、秋を見つける楽しみの前に、「長い夏が終わった!」という思いが先立つのも仕方ない程、近年は毎年のように、各地で暑さの記録を塗り替えているが、それは畑にも影響して来ている。

さて、夏の間絶え間なくその恵みを与え続けてくれては、食卓を豊かに、また疲れを癒してくれていた、たくさんの野菜たちも、ようやく一段落。収穫も朝夕だったものが、一日一回で済むようになった。そして次々と交代の時期を迎えている。それでも優に人の背丈を超えていたオクラ(熱帯地方原産の作物)は、成長もゆっくりになったとは言え、今でも花を咲かせ実を結んでいる。長く暑い夏は、故郷に帰った気がしたのかも知れない。

この時期はどこも冬野菜に向けての作業も加わり忙しいはずだが、私にはもう一つ大切にしていることがあって、それは来年に備えて種を採ることである。今では随分減ってしまったようだが、かつては各地でそれぞれの農家が、様々な作物を自家採種しながら作り続けていたということである。当初から関心もあったが、何より種の不思議さや美しさに興味を惹かれ始めたので、我が身の未熟さは承知の上で、知人等から在来種や固定種の種を分けてもらい、数種類から始めてみた。その後数は増して、今では数十種類になっている。例によって自然農の畑では、こぼれ種により更新してもらっている種類もあり助かっている。

時々、「それらの種の故郷はどこなのだろう」と思うことがあったが、長い旅路を世代交代を繰り返しながらここにやって来てくれたのかと思うと、神秘さを感じるとともに愛しく思えて来る。

ところで、人間は他の地域から移り住み暮らしてゆくうちに、まあ例外はあるとしても、いつのまにかそこの風土に適応して行くようになるのだが、種もそのような習性があるらしい。とは言うものの、近年の激しい気象や温度の変化を思うと、今後も含めて適応しきれるだろうかと、ちょっと心配になる。明らかに種まきや収穫のタイミングも以前とは違って来ているのだから。それでも驚くような仕組みと本能を備え持つ種の生命力に触れると、生き延びる力を信じたくなるのだが。

あらためて、近年の異常気象による各地でのあまりにも大きな被害を思う時、やはり考えるのは、地球全体に及ぶ程の気象や温度の激しい変化をもたらしている原因についてである。まあ現代のことだから、その変化に対応するために最先端の研究や技術による取り組みも可能ではあるだろうけれど、あくまでそれは一時しのぎでしかないとしたら。やはり、少しでも本源的な自然のしくみを知ることが、現在の状況をもたらした真の原因を理解することにもなり、解決のための真の方法も見いだすことにつながるのではないかと思う。さらには誰がするのかということも。我々人間だって自然の一部なのだから。そんなことを、この地に降り立っては、精一杯に育って行く野菜や草花が教えてくれている。

それにしても、この夏の乾燥の中で、刈草を充分敷いたとは言え、肥料も与えてないのに、高く伸びた茎に大きな葉を乗せているサトイモの姿は、かつて東南アジアの島で見た光景と重なってくる。オクラといい、サトイモといい、故郷と勘違いする程の夏だったのだろうか!

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