ちばにう通信

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(番外編)その五 不思議な国イエメン<前編>

投稿日:2006年3月11日 更新日:

TOYOTAの国
 イエメン共和国は北をサウジアラビア、東をオマーン、南をアラビア海、西をスエズ運河の入口紅海に接した、アラビア半島最南端の国である。日本のおよそ一・五倍の国土に二千万余の人々が住み、イスラム教を国教としている。

紅海に臨む西部には三千メートル級の山が聳え、紅海から沸き上がった水蒸気がぶつかって雨を降らすが、東部の砂漠(或いは岩漠)地帯は年に数回降る雨が滲みこんだ涸れ川に依存した暮らしをしている。一九八○年代に油田が開発されて近代化が進んだが、いまだアラビアンナイトの時代を彷彿させる生活を垣間見ることができる。

鉄道のない国なので長距離の移動や物資の輸送は自動車に依存している。ラクダやロバを見かけることも多いが、もっぱら自家用である。

看板や道路標識の殆どはアラビア文字で読めないが、何処でも出会うのは小型トラックの荷台に書かれたTOYOTAの文字である。車のおよそ八○%はトラックで、そのうちの九五%くらいはTOYOTAである(この数字は統計ではなく筆者の感である)。

私達が乗った車もTOYOTAのランドクルーザーであったが、乗用車も殆どはTOYOTAであった。北アフリカの砂漠観光も、かつて主流を占めた英国製のランドローバーは駆逐され、ランクルに王座を明け渡してしまっている。

砂漠の摩天楼
イエメン発で世界に知られているのはコーヒーのモカ、シバの女王、乳香だろうか。

いま、イエメンツアーの売りは、「中世のアラブ、砂漠の摩天楼」である。

地震の無い国、可耕地の少ない国、建築用材(木材・石)に恵まれない風土は、日干し煉瓦を使用した高層集合住宅を生み出した。泥に草や藁を混ぜて練り、平地に厚さ五センチ程に敷きつめ、縦横三十センチ程の木枠で型取りし、五目ほど乾燥させると壁材が出来上がる。最下層の土台だけは石やセメントで固めるが、その上は日干し煉瓦を重ねていく。

梁や床にはアフリカなどから輸入した木材を使用し、漆喰で化粧すれば完成である。最近は新市街にコンクリートで建てた家屋に住むことも多くなっているそうだが、この写真の高層住宅は観光用ではない。最下層には山羊や牛を飼い、一棟に血縁を同じくする五所帯前後の家族が生活し、古いものでは千年以上使われていると言われる。

二十一世紀の侍たち
写真の男たちはイエメンの男の正装である。ターバン、刀、長衣、背広、腰布の組合わせである。農業や漁業など激しい労働をするときは軽装となるが、新市街で背広にワイシャツ、ネクタイで働くビジネスマンも、仕事や知り合いに会うために旧市街に行くときはこのスタイルに変身する。ジャンビーアと呼ばれる刃が湾曲した短刀は、日本の侍の刀と同じで、自らの行動を律する魂が込められた刀で、滅多に抜かれることはない。

モカコーヒー発祥の土地に住みながら、貧しい彼らの多くが飲むのは、コーヒー豆の殻を煎ったコーヒーである。彼らは皆、礼儀正しく正統なイスラムの教えを守る紳士であった。

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