ちばにう通信

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(4)初夏の夕ぐれ 父の想い出

投稿日:2004年6月12日 更新日:

日本列島が一年で一番美しい季節を迎えています。家々の垣根には、バラの花がこぼれ、林の緑をふちどりに麦畑が黄色く熟しはじめています。

今が美しい季節といわれる理由は、夕暮れの空の見事さのためかもしれません。夏至近く、夕日は西の空をあかね色に染めて、たゆたっていて日はなかなか沈もうとせず、沈んでも薄ら明かりがしばらく続いて、ゆっくり夕刊が読めます。

「夕ぐれの時はよい時、かぎりなくやさしいひと時」と、くり返しうたったのは、〝夕ぐれ詩人〟といわれていた堀口大学。

山村暮鳥にも「雲」という題で
丘の上で
としよりと
こどもと
うっとりと雲を
ながめてゐる
とうたった五行詩がありましたが、これも今の六月、しかも夕ぐれのように思われてなりません。

さて六月二十日は父の日ですね。五月の母の日に比べて、華やかさと迫力に欠けるように思いますが、今は亡き私の父の笑えるお話をご紹介いたします。子供の頃の話です。

ある日の夕方のことでした。私のすぐ下の弟が、近所のガキ大将に泣かされて帰ってきました。父は「男だろう、泣かされて帰ってくるな、もういっぺん行って、この棒でそいつの頭をなぐってこい。なぐって来るまで家には入れん!!」と怒っています。

弟は泣く泣くその棒を持って出かけて行きました。私は二階の窓から、うなだれて肩を落として歩いていく弟の後ろ姿を見て、「男はつらいよなぁ」等とは云えませんでしたが、心からの声援を送ったのでした。

私も意気地というか根性というものがなくて、ケンカした時は「もう腹が立つ」と怒っていても、しばらくしてそのケンカ相手の子が遊びに来ると、もう忘れて飛んで行くので、母がいつもくやしがっていたのですが、弟は私に輪をかけてダメでした。

弟が出ていって三十分ほど経ったでしょうか。「ごめんください」と澄んだ女性の声、父が玄関に出たようです。

「あのぅすみません、お宅の坊ちゃんが、どうしてもうちの子の頭を棒でたたくと言って泣いておられます。その前にうちの子がお宅の坊ちゃんの頭をたたいたそうなんですが、何とか許してやってもらえないでしょうか。どうしてもたたくまでは家に入れないとおっしゃったとか・・・・」

近所でも美人の誉れ高いおばさんが、申し訳なさそうに父に謝っています。

「いいえ奥さま、何も頭をたたけなんて・・・・、男はそれくらいの根性を持てと言ったまでのことでして・・・・、いいえ許すのなんのって・・・・」と、しどろもどろの父。

そのやりとりを聞いていて、私はおかしくて、おかしくて、笑いをこらえるのが大変でした。

〝父の日〟〝夕ぐれ〟というと、遠い遠いあの日のことが思い出されます。愛すべき、明治生まれの父でした。

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