ちばにう通信

地域をつなぐ「月刊千葉ニュータウン」のサイトです。

HOME > 明日元気にな~れ

(44)感動を呼ぶマナーとは?

投稿日:2007年10月13日 更新日:

「ビールは飲みはじめがうまいように、私は秋が始まったばかりの数日が好きである」――これは、草柳大蔵さんの文章の一節ですが、いまはちょうどそんな季節の頃合いじゃないでしょうか。この夏のすさまじい炎暑が長く続いたあとだけに、なおさらそんな感じがします。

季節の変わり目、いろいろなお誘い、おいしい案内がとどきます。

なかでも一番うれしかったのが、白井に住んでいた時のお隣の坊やからの、結婚式への招待状でした。ワンパク坊やで足など細く、黒く、まるで棒のようでした。あの子がと思うと、よろこびもひとしおです。少々気が重いのが「マナーについて」というスピーチの依頼です。「さて、何を話そうか」と、頭をかかえていて、ふと思い出したのが、数年前ある年配の女性(Aさんとしておきます)から聞いた話です。

女性なら訪問着で出席するような華やかな席で、数人の女性が不穏な空気を漂わせながら、ひそひそ話をしています。声を押し殺しての会話なのに、ただならぬ空気が会場の隅々まで伝わってきます。

「気づいてた?あの人の着物の打ち合わせ、逆なのよ、逆!!」

教えてあげるべきか、見て見ぬふりをしてあげるのがマナーか、ひそひそ話が止まない中、Aさんは、困るのは当人であり、周りの者がわざわざ人を呼び止めてまで話題にするべきではないと考えていました。しかし、問題はこの後記念撮影が予定されていて、残酷にも決定的な証拠が残されてしまうことでした。

誰もが固唾を飲んだ、その瞬間、件の女性の身体を半分隠すように立った人がいたのです。みんなの話の輪に入るでもなく、終始一人で隅にいた初老の男性でした。単なる偶然とも考えられますが、この男性は時々にこやかに問題の女性に声をかけていたようです。

この男性の振る舞いを見ながら、Aさんは一人恥じていました。誰かのマナー違反を目にして、注意してあげるべきか、黙っているのがマナーかばかり考えている人たちの中で、さりげなく話題を変えるなどの配慮ができなかった、自分の〝マナー違反〟を。

「マナーを心得ている人たち」は、着付け直しが不可能な場所では、他人のミスを指摘しないことがマナーだと考えたのでしょうが、でも実際に皆でひそひそと話題にしてしまった時点で、それはすでに糾弾になってしまっています。

本当は、一人一人が胸の内にしまい込み、最後まで口に出さないのがマナーなのではないでしょうか。欲をいえば、初老の男性のように、彼女の粗相を本人にも気づかれずに、さりげなく隠してあげることができれば、まさに人の心をふるわせることのできるマナーといえるでしょう。

-

執筆者: