BIGHOP観覧車で事故
施設管理者の対応に疑問

 11月27日、印西牧の原地区にある大型商業施設「ビッグホップ」で場内のあちこちに「観覧車事故のご報告とお詫び」という1枚の張り紙が掲示された。

 11月6日夕方、観覧車が客を乗せたまま停止してしまうという事故があったことを「報告」するとともに利用者に「お詫び」するものだった。

 20日以上前に起きた事故について、なぜ今ごろ「報告」やら「お詫び」をすることになったのか。張り紙では、問合せ先として潟Vーキュー・アメニックという会社の千葉営業所が記されているが、なぜビッグホップ全体の管理者である住商アーバン開発鰍フ名前で報告・お詫びをしないのだろうか。

 この事故について、さまざまな関係者や近隣住民の話を聞いたり、当事者である住商アーバン開発に取材してきた経緯とともに、この事故および事故発生後の施設管理者の対応について考える。


1.実はかなり怖い事故だった?!

お粗末きわまる事故原因

 張り紙では、事故が比較的軽微なものであったかのような書き方になっているが、実際どうだったのか。事故がかなり深刻な問題点を含むものであったことを示唆する、重要なポイントが少なくとも2つある。

 第1に、観覧車の運行終了作業という、安全面から非常に重要なプロセスが極めて杜撰なやり方で行われていたこと。

 張り紙には、はっきり書かれていないが、観覧車の運転はパートとアルバイトの2人だけで行われており、2人とも運行終了作業のマニュアルを無視したか、あるいは知らなかったか、とにかく乗客がまだ観覧車に乗って、上空にいることに気づかず、運転を停め、電気を切り、運転室を後にした。

 観覧車の営業終了(平日は午後7時、券売機の終了は6時45分)は、最後に乗車した客のゴンドラ番号を明記し、その客が下車するのを確認し、最終の作業を行うというのがマニュアルに明記されており、今回はこの基本中の基本を怠ったために起きた、「お粗末」そのものの事故だった。
最悪事態を防いだのは客が持っていたケータイ(究極の「自己責任」施設?)

 第2に、事故がより危機的な状況に進行することを防いだのは、乗客がたまたま携帯電話を所持していたという「偶然」に全面的に依存していたこと。

 宙づりになったゴンドラに取り残されたのは、若い女性2人だったといい、たまたま所持していたケータイをかけまくって、自分たちの状況を「外部」に知らしめた。もし、彼女らがケータイを持っていなかったら、地上数十メートル、高所恐怖と闘いながら、吹きすさぶ寒風によりゴンドラ全体がどんどん冷却されていく過酷な環境の中で、ヘタをしたら丸々一晩過ごさなければならなかったかもしれない。乗客が高齢者だったりしたら、最悪の事態だって考えられなくはない。

 まかり間違えば重大な事態にも発展しかねない「事故」だったことを、張り紙は曖昧にしている。

 ゴンドラは安全性を考慮して、窓はホンの少ししか開かない。ここから怒鳴っても、地上に声が届く保証はない。夜間、警備員が巡回するのは2時間置き。警備員にゴンドラ内の危機を知らせるには、大声がダメなら、ゴンドラを激しく揺さぶりながら、ゴンドラの床を足で勢いよく踏み鳴らす方法が考えられるそうだが、高所恐怖症気味の記者など、想像しただけで気分が悪くなる。

 いずれにしても、乗客が味わう恐怖心、精神的な苦痛は相当なものがあっただろうし、この危機を脱したのが、乗客自身が所持していたケータイだったこと、施設の管理者側はこの危機を防ぐことも、危機から乗客を救い出すツールも持っていなかったことは、猛省すべきであり、1枚の張り紙で済まされることではないと思う。
2.施設管理者の事故後の対応

情報閉鎖体質

 事故そのものもさることながら、それ以上に問題点を孕んでいるのが、ビッグホップ管理者の事故後の対応である。

 実は、ビッグホップの施設管理者は、事故の2日前(11月4日)に、それまでのミキシング鰍ゥら住商アーバン開発鰍ヨと移行した。

 事故発生から21日目の11月27日になって、ようやく千葉県に事故の報告がおこなわれたわけだが、この報告自体、以下の2つの問題点を孕んでいるのではないか。

 第1に、施設管理者が自主的に県に報告したというより、事故のことが世間に知れ渡りそうになったので、渋々報告に及んだ。施設管理者としては当初事故のことやら、お詫び、再発防止について、県や地域社会にオープンにする気はなかったと考えられること。

 なぜそのように考えられるかというと、この間施設管理者は、常に小紙などからの取材の動きに反応するかたちで、動いてきているように見えるからである。

 住商アーバン開発が印西市へ事故のことを報告・説明したのは11月17日だが、その前の週小紙から印西市の担当者へ、事故のことを聞いているか確認の取材を行った。市の担当者が住商アーバン開発に問合せたのに対して、住商アーバン開発が市に赴いて説明を行ったという経緯である。

 県への報告にしても、11月25日に小紙を含む当地域担当記者のグループが住商アーバン開発に対して、共同記者会見を開催するよう申し入れたことが契機となって、27日の県への報告となったとしか考えられない。

 観覧車など建築基準法の対象となる遊戯施設で事故が発生した場合、事故発生時から24時間以内に特定行政庁(県)に報告することになっている。

 千葉県県土整備部建築指導課に、この規定が想定している「事故」とはどんな定義なのか聞くと、「人身事故」を意味するとの答え。では、ビッグホップの施設管理者は、今回の事故を「人身事故」と考えなかったから、24時間以内に県に報告しなかったのか。たしかに、誰もケガは負っていない。

 では、県の担当者は、今回の事故を「人身事故」と考えるのか、否か。記者が取材で得た情報(シーキュー・アメニックが報告した情報よりも若干詳しかったかもしれない)を県の担当者にぶつけた上で、見解を問うと、表面上は誰もケガをしていないのだから、「人身事故」とはいえないかもしれないが、より甚大な事態に発展する可能性もあったことを考えると、「人身事故」と考えてもおかしくないとの見解であった。

 さらに、国土交通省住宅局建築指導課にも話を聞いた。

 国の考え方も、「重大な事故につながる不具合」について報告することになっているといい、事業者側で報告する必要があるか否か、判断に迷うような場合には、ともあれ国なり県などへ事故についての情報を上げてきてほしいと言っている。
観覧車事故をめぐる施設管理者の対応
月 日 管理者の動き 取材者の動き
11. 6 午後6時半過ぎ、観覧車で事故が起こる。
        11 テナント店長会議−住商から事故があったことの報告があるが、事故についての具体的な説明はなし。
        14 小紙から印西市に事故について確認取材。市は、噂程度の情報のみで、詳細な情報は得ていないことが判明。
   17 印西市から住商へ問合せがあり、住商が市に説明に赴く。
   19 小紙、住商に取材。
   21 小紙から報道各社へ共同取材を提案。
   25 報道各社連名による共同記者会見を住商へ申入れ。
   27 CQ、千葉県へ報告。館内にお知らせ。 住商から共同記者会見についての返事−CQから取材してほしい。
注)住商=ビッグホップの管理者「住商アーバン開発」、CQ=観覧車の運営会社「シーキュー・アメニック」
責任転嫁?

 第2に、県への報告も張り紙の掲示主体も、ビッグホップの管理者である住商アーバン開発鰍ナはなく、観覧車運営会社のシーキュー・アメニックの名前になっていること。

 事故発生が、ビッグホップ施設管理者がミキシングから住商アーバン開発に移行して3日めに起きたこと、事故発生後も片時も観覧車を停めることなく、あたかも何事も起こっていないかのように運転し続けたこと、県などへの報告に非常に消極的な姿勢で、しかも事故発生から20日以上も経っての報告となったこと等々、この事故は、単に観覧車運営会社のちょっとしたマニュアル・ミスで片づけてはいけないのではないか。

 住商アーバン開発としては、ミキシングから管理業務を移管された直後に発生した事故だけに、出鼻を挫かれたような思いなのかもしれないが、この事故の責任をすべて観覧車運営会社に押しつけるのは、それ自体これだけの大型商業施設を管理運営していく主体としての資質が疑われるのではないか。

 回転ドアの事故が起きた時、森ビルの経営者は、回転ドアのメーカーのせいにして、知らぬ顔の半兵衛を決め込んだだろうか。中国製のメラミン入り食材などを知らずに、あるいは騙されて、自社の食品に使ったことが判明した食品加工メーカーは、本来被害者の立場を主張してもおかしくないのに、消費者に詫びるとともに、必死になって流通に出回った商品の回収に努めているではないか。

 観覧車の事故が起きても、翌日も何も起こらなかったかのように運転を続け、記者が取材に行くと、できるだけ軽微な事故であったかのような説明をした上で、「実質的に地域に迷惑をかけていないではないか」と居直り、事故のことが次第に世間に知れるようになると、遅まきながら県に報告(それも、観覧車運行会社名で)するという対応をみると、このような体制で検討された再発防止策など、どこまで信頼していいものかという疑問を消すことができない。
3.背景説明   ミキシングから住商アーバン開発へのバトンタッチ

 印西牧の原駅前の商業施設「ビッグホップ ガーデンモール印西」は、昨年9月オープンした。同施設は、住友信託銀行が信託受託者として土地・建物を所有、カーライルグループが100%出資した竃qの原プロパティーを通してエンドテナントと定期建物賃貸借契約を結んでいる。商業施設としての実務的な運営管理については、企画段階からミキシング鰍ェ担当してきたが、今年5月ミキシングが民事再生手続きに入ったため、これに代わる運営管理者として、11月4日から住友アーバン開発鰍ェ当たることになった。
最後に

 ビッグホップ観覧車の事故の取材の過程で最も考えさせられたのは、《近年牧の原地区に集中立地している大型商業施設の管理や運営およびその過程で発生したトラブルや事故、危機といったことに関して、地元の自治体や住民は何ができるのか、いやそもそもそういった情報を自治体や住民はどのようにして知りうるのか》といった点である。

 今回の事故の経緯と、これをめぐって事業者、行政、地域住民などがどう処理し、信頼関係を築いていくか(地域としての危機管理)は、平成25年度の千葉ニュータウン事業収束後に、これだけの大型商業施設や業務施設、そしてそれらを支える高規格のインフラを地域の行政、住民がどう維持し、地域との共生を図り、地域発展のために活用していくかを展望する上での恰好の試金石となるのではないか。